天井が抜けるほど・・・
もうかなり古いことになるが、今でこそクレジットを利用する人も多く、Mといえばクレジットの店といわれるくらいよく知られるようになったMも、当時はまだ月賦の店というと抵抗を感じる人が多かった頃のことです。
中野の本店で突然二階の天井が落ちた。
この思いもよらぬ事故で、そのときテレビを見ていたお客二十七人が大怪我をしてしまった。
こんな事故はそう起こるものではないから、トップニュースとして大々的に報道されたことはいうまでもない。
ラジオ、テレビはもちろん、翌日の新聞にも大きく載った。
さて、こんな事態になって、これをチャンスと考えろというのは所詮無理かもしれない。
当事者であれば、うろたえてあたりまえでしょう。
この事故でMも沈没かと多くの人に思わせたが、このとき沈没、していればいまのMはない。
こんなイメージ・ダウンの事故を起こし、「ピンチだから再建資金を貸してほしい」と、銀行にまともに申し込んでもなかなか取り合ってくれないのが普通でしょう。
たとえ、借りることができても、世間体をはばかって、うわさの消えかかった頃をみはからい、細々と開店にこぎつけるやり方を取るものです。
ところが、Mの社長は銀行にこういって説明したのです。
「天井が抜けるほどお客さまがきてくれるようになった」と。
謝罪広告を出して世間体をつくろい、何をいわれてもただペコペコと頭を下げるだけの経営者には、逆立ちをしても思いつかない発想です。
銀行から借入れの話がきまると、本店改築を発表し、そのニカ月後には、もう落成広告を出したのです。
まだ事故後の記憶がホットなうちの広告だから、「へえ、あのときの天井が落ちたという店がもう建てたのか・・・」と思った人は多かったはずです。
事実、もの珍しいのも手伝って見物にくる人もいたというくらいであるから、予想以上の効果です。
その後の「クレジットのM」の成長ぶりはご存じのとおりで、小売業ベスト・テンに発展しています。
ピンチをチャンスに変えた好例です。